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媒体
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CD
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1. ALTAIR
2. TORNADE
3. サマータイム
4. IN THE FOREST
5. Pirates' song
6. rabbit tail
7. ハンサムウーマン
8. Northern Lights in Karjala
9. Out of Circle
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ジャンル
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Jazz Jazz-Rock系 Progressive Rock
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発売日
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2010 年
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収録枚数
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1 枚
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販売価格 (税込)
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\2,619
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収録曲数
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9 曲
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在庫切れ
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Comment
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よく世間一般に「インスト」と呼ばれる音楽、つまり歌の無い音楽の多くは現代ではフュージョンやスムース・ジャズなどと呼ばれ、まるで耳触りの良い音楽の代名詞のようになってしまったが、かつてマイルス・デイビスが「ビッチェズ・ブリュー」で提示した−歌のない音楽−はかなり(いや、とんでもなく)尖がっており、そのイデオムは数年後マハビシュヌ・オーケストラやリターン・トゥ・フォーエバー、ウェザー・リポートなどに結実し、’70年代当時、飛ぶ鳥をも落とす勢いだったプログレッシヴ・ロック界のスターであったイエス、キング・クリムゾン、ELPらも脅かすほどの一大勢力となった。
小川真澄のデビュー・アルバム「Asterisk*」を聴いてまず感じたのはそんな歌の無い音楽と同じ匂いであった。なので、ジャンル分けは好きではないが、あえて彼女の音楽を−プログレッシヴ・ジャズ・ロックMUSIC!!!−と呼ばせてもらったのだ。
壮大なイメージではじまるオープニング・ナンバー「ALTAIR」での彼女のアドリブ・ソロが歪んだオルガン(!)だったのに筆者はまず小躍りしてしまった。 筆者の友人でもあるデイヴ・スチュワートが在籍したブラフォードを彷彿させるような「Tornado」のアウト・サイドなテーマもすごくカッコいい!ガーシュイン名義の「サマー・タイム」はエッシャーのだまし絵のようなもので、たまたまメロディーが「サマー・タイム」なだけ。変幻自在なそのアレンジこそオリジナルな真節満載と言えよう。荘厳なオルガンで始まる「IN THE FOREST」ではボトムを支えていたベースの後藤眞和が上の音域でメロディーを奏でる瞬間が本当に素晴らしくて、飛び道具やチョッパーなどを一切拒否しつつ一貫してあくまで純粋にベーシストとして本作に参加しているからこそ、こういう瞬間の説得力がそんじょそこらのベース弾きとは違うのだ。
「pirates’song」で聴けるピアニカは筆者も使用している44鍵盤あるおそらくピアニカでは一番音域の広い機種だと思うが、実はこの楽器を彼女に紹介したのは筆者なのだ。この曲を聴けば分かるようにビブラートからベンディングに至るまで彼女はすっかりマスターしてしまったようだ(筆者よりもずっと)。メロディーやコード進行が一体どこへゆくんですか〜!?な「rabbit tail」のテーマにはウェザー・リポート的な人を食った(ホメ言葉)テイストを感じ、「ハンサム・ウーマン」のローズ・サウンドで奏でられるテーマでは「そうか、マイナー・キーのメロディーで9thではなく11thちゅうのもええなぁ」と学習(筆者が勝手に)したり、「Northern Lights in Karjala」の壮大な世界に身を任せ「これで終わりかなぁ?」・・・と思う無かれ、最後は小川真澄のオルガンが炸裂 (!)する「Out of Circle」で本作「Asterisk*」は幕を閉じるのであった。
ギターの柳生俊彦、ドラムの小橋祐二の若手2人もすごく意気がよくてストレートでいい!ロック兄ちゃん達がインストをやっても単なる耳障りのいいBGMには収まらないといういい例が本作でもある。
言葉の無い音楽は不自由なようでいて、実は言葉(歌詞)がない分、聴き手にイメージを限定させず好きな言葉や世界を自由に想像させる事が出来る。この「Asterisk*」を聴いていて筆者にもいろんな景色や言葉が浮かび、いろんな場所に旅をする事が出きたのだが「どの曲でどのように?」を書くのは無粋なので止めておく。あなたはあなたの景色や言葉を本作を聴いて感じいろんな場所へ行ってください。
そして、くどいくらい「歌の無い」−と書いたけれど「Asterisk*」には−歌心−、どこを聴いても−歌に満ちあふれている−事を最後に付け加えておこう。
《文/キーボーディスト・小川文明》
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